"ひも"とは002:音楽の"ひも"

「芸術とは、"ひも"を表現すること」だと、俺は思っています。きっと皆さんの周りにも、芸術が得意な人、不得意な人がいると思いますが、その違いは、上手く"ひも"を表現できるかできないかの違いなのではないでしょうか。

芸術が不得意な人から見れば、得意な人ってのは、「才能があるから上手い」と考えるのでしょうけど、俺はそう思いません。芸術が得意な人というのは、「"ひも"を感じ取る感覚」を知っている人なのです。もちろん、才能があって先天的にその感覚を知ってる人もいますが、同時に、後天的に会得した人も同じくらいいると思います。一方、芸術が不得意な人="ひも"を上手く感じ取れない人。
この人が、なぜ"ひも"を感じ取れないのかというと、"ひも"にフィルターをかけているからに過ぎません。

音楽で具体例を挙げてみます。まず始めに、コードについてです。このmp3を聴いてみてください。

sample1

これは、礼をする時のピアノ伴奏です。きっと分かったと思います。では、次。

sample2

もし、これが礼をする時鳴ったら、「アレ?」と思うことでしょう。前者はコードで言うと、「C→G→C」であるのに対して、後者は「C→F→C」です。つまり、「アレ?」という感情は、その人の"ひも"が「GとFの違い」を感じて生じたものだったのです。これと同じように、"ひも"は音楽を聴いている最中、常にコードを感じ取っています。だから、音楽が心地よく聞こえるのです。

だけど、音楽をやっていない人は、普段、音楽を聴いていても、「あ、ここは、C→F→G→Cだな」とは思いません。それは、"ひも"はコードを感じているにもかかわらず、フィルターをかけてしまっているので、意識上に昇ってこない。つまり、「"ひも"を感じ取る感覚」が鈍いのです。

続いての具体例は、絶対音感相対音感。これは、養老孟司さんが出演していたTV番組の内容を、俺なりにアレンジしたものです。まず、このmp3を聴いてみてください。特にメロディを中心に。

sample3

ほとんどの人は「ドレミファソラシド」と聴こえたのではないでしょうか。でも、本当は、「ソ♯ラ♯ドド♯レ♯ファソソ♯」と鳴っています。この時、「ドレミファソラシド」と聴こえることを相対音感。「ソ♯ラ♯ドド♯レ♯ファソソ♯」と聴こえることを絶対音感というのです。よく言われる、「絶対音感を持った人は全ての音が音階に聴こえる」というのは、最高クラスの絶対音感のことでして、そこまでいかなくても、先ほどのmp3を「ソ♯ラ♯ドド♯レ♯ファソソ♯」と聴こえるならば、絶対音感があると言っていいと思います。

ちなみに俺は、相対音感しか持っていないのですが、4歳から8歳位までピアノを習ってましたから、ピアノの音に限り、しかも単音ならば、絶対的な音を当てられます。高すぎたり低すぎたりすると無理ですが・・・。一応、それも絶対音感ということですが、最低レベルですので、これでは絶対音感があると言えないでしょう。

話を戻します。

実はこの絶対音感相対音感相対音感の方が、高度な処理をしているのだそうです。つまり、相対音感というのは、耳からは「ソ♯ラ♯ドド♯レ♯ファソソ♯」と入力されているのに、それを脳内のフィルターで「ドレミファソラシド」と変換しているのです。一方、絶対音感というのは、「ソ♯ラ♯ドド♯レ♯ファソソ♯」という入力を、そのままにしているだけ。結局、これもコードと同じで、"ひも"は絶対音階を感じているにもかかわらず、フィルターをかけてしまっているので、相対音階にしか聴こえないわけです。