養老孟司-「養老孟司の<逆さメガネ>」

養老孟司さんの本は割と沢山読んだんですが、どの本にも確実に含まれている主張があって、それをメインテーマに持ってきた本が、「バカの壁」であり、この本だと思います。その主張とは、「いろいろ考えてみろ」ということ。つまり、「複雑系で思考しろ」ということではないでしょうか。

例えば、「戦争はいけないことか」という質問があったとして、「絶対いけないことだよ!」とは言うな、それは原理主義で危険な発想だぞと、そういう主張だと思います。「じゃあ、どうすればいいんですか」と言いたくなりますが、養老さんは、その「じゃあ、どうすればいいんですか」という安易に答えを求めることがダメなんだと、そう言ってます。ですが、俺はここで、あえて「じゃあ、どうすればいいんですか」に対する回答を考えてみます。

戦争はいけないことか、いや、いい事かもしれない。例えば、戦争によって危険因子を排除できて不安が減るかもしれない。いや、その排除すること自体が危険じゃないか。でも、少ない犠牲で多くの人が安心できたら期待値としてプラスだろう。まて、今までそういう理論で戦争が行われてきたのに、全然安心できる世の中になってねーじゃねーか。やっぱり戦争はいけないことだろう。だけど、それじゃあ危険因子はどうするんだよ。あの核武装した奴ら、放っておいたら他のトコ攻め始めるぜ。だからそこは対話と圧力でだなぁ。対話と圧力って言ったって・・・・・。

・・・という風に考えていって、あることに気づくわけです。「あ、俺、頭でばっかり考えてる。」養老さんは、頭でばっかり考えることを「都市化」と呼んでいます。「都市」とは、要は人間の頭で作られた世界なわけですが、それがまた原理主義だと。

「じゃあ、どうすればいいんですか」と、また同じ質問になりますが、「頭」の反対は「からだ」であり、「都市」の反対は「田舎」です。今度は「からだ」と「田舎」のことも考えてみろと。しかし、「からだ」と「田舎」のことを「考え」たら都市化なわけでしょう。なので、「からだ」を使って、「田舎」に行って、体感しなくてはなりません。だから養老さんは「参勤交代をすればいい」と言ってるのだと思います。ところで、最初の問題は「戦争はいけないことか」という事でしたが、その結論は「参勤交代をする」という事になりました。ここは笑うところですよ。これってつまり、「いろいろ考えてる」ってことだと思うんです。少なくとも、「戦争は絶対いけないこと」と主張する人のように、思考停止してはいません。そうやって、頭の中に「複雑系」を持ってる人は、決してビルに飛行機で突っ込んでいったりしない。そういうことなのだと思います。