茂木健一郎-「ひらめき脳」

この本を読んで、長年の疑問が解けました。その疑問とは、「俺、高校生を境に、テストで点をとれるタイプの人間から点をとれないタイプの人間になったみたいなんだけど」というものです。普通ならそれは、「中学時代の方が勉強してたんだろ?」とか、「高校からは基礎ができてないと点がとれないんだよ。」なんていう理由で片付けられてしまい、結局「オマエの努力不足だ」ということになったわけですけど、自分自身の感覚としては、そうじゃないんですよね。その答えは、俺がいわゆる「ひらめき脳」になったからみたいなんですよ。

ほら、俺、高校時代から曲作りを始めたじゃないですか。作曲って、つまりは「ひらめき」なわけです。そして、「ひらめき」っていうのは、この本によると「スロー・ラーニング」なんだそうです。どういうことかというと、例えば、「25+34は?」と聞かれたら、みなさんきっとすぐに、「ああ、59ね。」と答えられるじゃないですか。これが「ファスト・ラーニング」なのだそうです。

一方、「いい曲を作れ」と言われたら、そんなに簡単にはできないですよね。四六時中悩みに悩みぬいて、ある時、「これだ!」とひらめくわけでしょ?これが「スロー・ラーニング」らしいです。そしてまた、「ひらめき」とは「ド忘れしたことを思い出す」ということとかなり似ているのだそうです。

このことを俺はこう思ったんですよ。Webサイトって、最近見たサイトは一次キャッシュに蓄えられていて、すぐに出力できるじゃないですか。一方、初めて見るサイトは全部ダウンロードしてこなきゃいけないから、それだけ時間がかかる。前者が「ファスト・ラーニング」で、後者が「スロー・ラーニング」ですよね。まあこの例えは、ブロードバンド化した現在だとピンとこないかもしれませんが。

でも、学校のテストって明らかに「ファスト・ラーニング」でしょう。無限の時間を与えて、「ひらめき」を試したりしませんから。ということはですよ。「俺は、テストに不向きな人間だから、そんなにテストの点で一喜一憂しなくてもいい」ってことじゃないですか!乱暴に言うと、「俺は創造性があるから、テストの点が悪くてもいいんだよ!」ってことです。ああ、これは俺の心の叫びなのですけど。「ファストもスローもどっちもできた方がいいじゃん」って言われそうですが、脳としてはそうもいかないらしいんですよ。脳って、ある脳力(能力)に特化すると、ある脳力(能力)が衰えるという、背反な感じになってるのだそうです。レインマンのように。

ああ、だからと言って、学校の勉強を軽んじて良いわけではないですよ。勉強したことは「ひらめき」の材料になりますから。ただ、一生懸命勉強したのにテストの点が悪くても、そんなに落ち込むことはないということです。これからの時代、求められるのは「ひらめき」、つまり「創造性」ですから。